徒然なる走り書き

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再掲載モノ。

以前のサイトで掲載していたものなのですが、そろそろそのサイトを消去しようと思うので、こちらで再掲載致します。
二年前のブツなので、なかなか恥ずかしい出来です(´Д`;)

*何日かに一回でも構わないので下の白いピーをクリックしてくれるとありがたいです(´Д`;)


――――――――――

    温かい春

――――――――――



「う…」


体がとても重い。
まるで何日も動き続けて、疲労がピークに達した時みたいだ。
何とか動かせる部位といえば、手ぐらいだろう。
と、言うかそれさえ動かそうとする時でさえ、何時もの何倍もの労力を要する。


「大丈夫か?」


わたしがこんな状態になって、ずっとわたしの事を傍で看ていてくれている先輩が心配そうにわたしの顔を覗き込む。
顔と顔の距離が近くて少し恥ずかしくなる。
ほんの少し自分の頬が熱くなるのを覚える。
顔と顔の距離が近くなる状況なんてここ数年、別段珍しい訳じゃないのに、わたしは未だに慣れない。
けれど、それが良い事だと思ってたりする。


「は…い」


首が動かせないので、少し掠れた声で返事をした。


「……ライダーが凄く申し訳なさそうな顔してたぞ」


先輩は少し困ったように笑いながら言った。
そう、わたしは今、ベッドの上で寝ている。
なんと言うか、わたしが何故こうなったかと言う直接的な原因は彼女にある。

一番悪いのはわたしの姉さんなんだけど。
ちなみに、何が起こったかと言うと――。

今日のお昼過ぎに倫敦から小包が届いた。
送り主は予想してはいたけど、やっぱり姉さんで、ある魔術道具を作ったから試用して欲しいと添え付けの手紙に書いてあった。
うちではあまり見かけない入れ物で、LとRと言う文字が蓋についていた。

ふむ、と少し考えて居間でお茶を飲んでいたライダーにソレを渡した。
彼女も少し不思議そうにソレを見て、別に今のままでも不便ではないのですが、と一言漏らして居間から出て行った。

少し待っていると、すぐに彼女は帰ってきた。
何時も掛けている眼鏡はなく、裸眼のままの彼女がいた。
もちろん、『本当』に裸眼ならわたしは一瞬で石化する。

今、彼女がつけているのは魔眼封じの眼鏡ではなく、魔眼封じコンタクトレンズだった。

――のはずだったのだ。
ソレは製作者の意図に反し、事もあろうか魔眼の効果範囲を飛躍的に広げたのだ。
彼女の目の前にいたわたしは声も上げれず固まってしまった。













「さっき電話で遠坂に文句言ったら、すぐ様子を見に帰るから、って言っていきなり切られた」

「…姉さん、帰ってくるんですか?」


わたしは少し驚いて聞き返してしまった。
先輩は、多分な、と言って苦笑した。
わたしは姉さんが慌てている姿を思わず思い浮かべ、少し吹き出してしまった。
そんな事しないだろうな、と思ってもアレでかなりの姉バカだと思う。


「そうだ…天気も良いし窓でも開けるか?」

「あ、はい。お願いします」


窓を開けて貰うと、ふわっとした温かい陽気が部屋の中に入ってきた。
緩やかな風がわたしの顔を撫でていく。

嗚呼、わたしはまた春を迎えられた。
みんなにとっては些細な事だとしても、わたしにとってはとてつもなく嬉しい事だった。


「桜…。体の調子が良くなって、遠坂が帰ってきたら、みんなで花を見に行こう」


言ってほしい事を言われ、わたしは笑顔になって小さく返事をした。






























「はぁ…焦って帰ってきて損したわよ」


あれから三日程経って、早朝に姉さんは帰ってきた。
わたしの方の体調はと言うと、昨日にはもうすっかり治ってしまった。
どうやら、あのコンタクトレンズは効果範囲を広げれる代わりに、魔眼の効力の濃さは薄くなるようだ。

ちなみに、わたしは今日帰ってくる事には気づいていた。
それは倫敦から出発する直前にうちに連絡が入ったので、わたしと先輩はすぐに準備に取り掛かった。
もちろんそれは、花見の準備だ。


「凄く急いで帰ってきたのにお花見の準備なんてしてるし、もう」

「あはは…ごめんなさい。でも、たまにはいいんじゃないですか?」

「まーね。お花見なんて年に一度の物だしね」


姉さんは呆れていたけど、少し頬が緩んでいた。
先輩は藤村先生を呼びに行ってて今はいない。
久しぶりに姉さんと面と向かって二人きりで話す。

そして、じゃあわたしも手伝うわ、と言ってわたしの隣に立つ。
どう考えてもかなり無理しているけど、このやりとりが嬉しかった。


「うん。やっぱ原材料は日本が一番ね」


そう言えばこの前、作りたいものが作れないと愚痴をこぼしていたような気がする。
何となくだけど、わたしは覚えていたのだろう。
だから、今回のお重の中身には洋風の物は一切入っていない。


「そうそう。そう言えば、桜と士郎は大学生にやってるのよね」

「はい、そうですよ」

「ふーん、で、どうなの?」

「楽しいですよ。毎日が」


これには嘘偽りがない。


「へぇ…。――魔術の方は?」

「それも…やれるだけはやってます。ライダーが厳しくて、いっつも挫けそうになっちゃいますけど」


ある意味、わたしの身体をコントロールするために始めたものだ。
時々、とてつもない苦痛を感じるけど、必要なのだからやめたいとは思わなかった。


「士郎の方は?」

「はい。先輩も週三回ぐらいになりましたけど、一緒の時は二人で頑張ってます」


本当は反対したかった。
けれど、ソレを学ぶ理由でわたしは折れてしまった。
仕方ないじゃないか……。
わたしを守るため、なんて言われてしまったのだから――。
だから、まったくもって仕方がない――。












「桜ちゃーん、今日は無礼講だよ無礼講ー」


桜が満開になっている公園――。
もうお酒が入って出来上がっている藤村先生がわたしに強引にお酒を勧めてくる。
わたしは苦笑しながらもコップを傾けて、ソレを貰った。

わたしもお酒を飲める様な歳になった。
強いと言う訳じゃないけれど、それなりに楽しめる程度に嗜んでいるつもりだ。
酔うと言う事も悪いとは思わない。

ふと空を見上げようとすると、桜の花びらが風で舞っていた。
今日がピークだろうから、来週にはもう散っているんだと思う。
子供の頃から思うけど、なんで桜の花はこんなにも短命なんだろう、と思ってた。
でも、毎年この瞬間に気づかされるのだ。

だって、この花たちは美しいからこそ短命なんだ、って。
この時だけのために、生きているんだから――。

みんなの方へ視線を向ける。
みんなが笑っていた――。
みんなはとても綺麗で、とても温かかった。

一番温かいのは先輩で……。
そして、藤村先生……。

ああ、違うか…。
姉さんもライダーも藤村先生も先輩と同じくらいに温かくて優しいんだ。
そんなみんなにわたしは生かされている。
本当、しみじみと考えると泣いてしまいそうになってしまう。

出来れば、わたしもそんな存在になりたい。
だから、わたしも出来る限り笑っていよう――。
みんなと同じくらい優しく――。






























オマケ。


「うーん、時差ボケを抜かせば最高ね」


わたしは陽気に誘われて、思わず伸びをしてしまった。
少し凝っていた肩がほぐされて気持ちが良かった。

なんだかんだ言って、わたしも日本人なのだ。
花見と言う恒例行事がないと少し損した気分になる。


「ところで、アレがあの様な効果を発した原因はなんだったんですか?」


隣にいたライダーがわたしに問いかけてくる。
きっと、あのコンタクトレンズの事だろう。


「あー、別に何処も悪い部分はなかったわよ」

「は?」


ちょっとした種明かしをしよう。


「今年はどうにも倫敦から抜け出せそうになかったのよ。それこそ、何か大きな理由がないと」

「と、言う事はあのコンタクトレンズは元々魔眼封じではなく――」

「そう。確かに偶然の産物だけど、言うなれば魔眼広範囲拡散レンズね」


そう言うと、いきなり隣の雰囲気が変わった。
わたしは喋りすぎた、と後悔する。


「ちょ、ちょっと、酔いを冷ましてくるわ」


そう言ってその場から逃げ出す。


「待ちなさい、リン!私は貴女の所為で人を殺めるかもしれなかったのですよ!」

「そんな簡単に桜は死なないわよー!」


ライダーが怒りの形相でわたしを追ってくる。
こんなやりとりも楽しいものだ。

ふと、横目で桜を見ると笑っていた。
それを見ると、やっぱり帰ってきてよかったと思った。

だって、彼女はあんなにも綺麗に笑っているのだから――。
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テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

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