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徒然なる走り書き

トップページ作りました。

遥かに仰ぎ、麗しの

どれほど需要があるのか分かりませんが、折角書いたのでかにしのSSを掲載します。
やっぱりPULLTOPの話は面白いです。
こういう良作を微力ながらみんなに広めて行きたいです。

よかったらコメントなどを貰えるとありがたいです。
先程書いたように、どれだけ需要があるのか分からないので。

*何日かに一回でも構わないので下の白いピーをクリックしてくれるとありがたいです(´Д`;)


タイトル:遥かなる理想、遥かなる高みを目指して――。

まいったなぁ。
ホント、まいった。
僕はホントに場違いな場所に来てしまったのかもしれない。
今更ながら僕はこの学院で働く事が怖くなってきていたりする。

まずは僕の生活が大きく変わった事だ。
ここの風変わりな校風の所為で学生寮で住まなければならない。
確かに学生寮と言うには勿体ない程豪華なのだけれど、そこには女の園だった。
そんな場所に僕は住む事になってしまったのだ。

僕の案内をしてくれたメイドさん、リーダさん、によれば僕や他の先生が住む事によって羞恥を忘れずに生活出来るから、のようだ。
つまり、普通の女子学校みたく生理用品の話やら何やらを抑止しているようだ。
実際、僕は新任なのでそう言う類の会話が女子学校で起こるのかは知らないけれど。
とにかく、悪い事やら良い事なのやら…。
僕はこの凰華女学院分校での寮生活が始まった。

ちなみに、僕は分校側の寮へと移り住む事になった。
幸か不幸か、雰囲気だけは普通の女の子がそこにはいた。
けれど、会話の端々に御嬢様感が出てしまうのが少し困るのだが…。

そして、更に追い討ちを掛けるように日々の食事について…。
ここの学院のシステムで、食事などにお金は掛からない。
掛からないのだけれど、とてつもなく高級食品ばかりなのであまり食べている気がしないのだ。
裏メニューとして一般市民…ゴチとか毎回テロップが出るようにリーズナブルなメニューもある。
だけど、困った事に何気に高級感が抜けないのが辛い所だ。

化学調味料をふんだんに使ったラーメンとか炒飯を食べたい…。

次に学院での仕事についても……。
授業などは研修でやったような事や職員室での事務作業は何とかこなしている。
職員室ではン十万円の湯のみを割らないように両手で震えながら使っている。


『すぐに慣れるよ。僕の面倒を見てくれた先輩はこれでお手玉してたよ。流石に僕はやらないけどね』


今、僕の面倒を看てくれている滝沢先生はそんな事を言った。
人間の適応能力は恐ろしいモノだと思った。

授業では生徒たちも真面目に講義を受けてくれるし。
ほとんどの子が真面目に課題を提出してくれる。
悲しいかな、『全員』ではないんだけれど。

そうそう、僕が担当しているのは美術系全般だ。
昔から特技と呼べるモノがなかったのだが、絵だけはマトモな物が描けた。
けれど、そこまで特別な絵を描けるだけの技術も情熱もないために教師になる事を選んだのだ。

何とも情けない話だ…。

そんな事を人に話したら呆れられるし、失望されたりもするだろう。
何よりこの学院は夢に明るさに溢れているような気がしたから。
僕には場違いなのだ。






今日は自分が担当する講義がないので、職員室で事務作業をずっとしていた。
何時間に一人ぐらいの割合で生徒が質問に来たりもしたが、暇な一日だった。
事務作業を終えて、僕は寮へ戻ろうと思い、職員室を出て廊下を歩く。


「おい、労働者」

「――。」


僕がこの場所に場違いだと思っている理由…。
それは何より、僕にはこの子がとても苦手だった。

風祭みやび。
名門、風祭の息女である彼女。
僕にとって、ここに就職しなかったら永遠に会わなかったであろう存在がそこにはいた。

傍若無人。
少し身勝手な部分があるけれど、彼女には人を惹き付ける何かがあった。
僕よりも年下の女の子に僕は気圧されてばかりなのだ。


「ここの生活には慣れたか?」

「は、はい」


嘘だ。
生活は出来ているが、一生慣れる様な感じがしない。
何より、彼女のオーラが僕には偉大過ぎるのだ。


「…そうか。なら、もっとシャキっとしろ。最近のお前からは負のオーラが出てるから、こちらま――」

「りじちょー、新任の先生を苛めちゃ駄目ですよー」


突然現れた滝沢先生が理事長の頭を乱暴に撫で回しながら、会話に割って入ってきた。


「つ、つかさ……」


この学院で意見出来るのは数少ない。
その数少ない人間が僕の面倒を何かと看てくれる滝沢先生だ。
凰華ジャーナルによるとこの二人は付き合っているらしいのだが、滝沢先生はリーダさんとも仲が良いとの噂もある。


「だ、だって――」


この子は滝沢先生の前になると年相応の反応をするようになる。
だから、あの校内記事のが正しいのじゃないかと思っている。


「まだ、慣れてないんだからさ。僕の時だってそうだったろ?」

「むぅ……。」


滝沢先生は少し苦笑しながら理事長に優しく言い聞かせる。
そして、その言葉に僕の胸は痛んだ。


「みやび…」


小声で滝沢先生が理事長の名前を呼んだような気がした。
僕は敢えて聞こえないフリをする。


「…わかったわかった。確かにここに来たばかりの頃の司よりは優秀だからな」

「はぁ……」

「まぁ、実際に人に言われるとムカつくけどな」


滝沢先生は苦笑する。


「だがな。司はこれでも成長している。お前にも成長して貰わなければいけない。あたしはお前の将来を買って、お前を迎え入れたんだから」

「は、はい…」


何故、僕の将来性を買われたのかは分からない。
だが、僕にとっては更に重荷になったような気がしてならない。


「じゃ、じゃあ、僕はこれで――」


そう言って、僕は逃げるようにこの場から立ち去った。






「ふぅ……」


何処をどう歩き回ったのか分からない。
完全に迷子だった。

けれど、景色は悔しいくらい綺麗だった。

景色はとても綺麗だ。
だけど、僕はとてもチッポケな感じがした。
この素敵な景色を描ききれる程の技術は僕にはない。

『描け』はするだろう。
けれど、そこに『想い』を載せれないのだ。
とても美しくて、今にも筆を動かしたい筈なのに――。


「あ、ここにいたんだね――」


後ろで声がした。
聞き覚えがある優しい声だ。


「滝沢先生――」


彼はとても良い教師だと思う。
優しくて頼り甲斐のある…。
僕の理想の教師像なのだと思う。


「僕…ここでちゃんとやっていけるんでしょうか?」


思わず言ってしまった弱音――。
折角決まった就職だけど、僕には荷が重過ぎるような気がしてしまう。


「――僕もね、ここに来た当時は君と同じ新任だったから。気持ちは分かるよ」

「え……」

「君の方が僕より良い教師だと思う。何せ、初日にやらかしちゃった事があるからね」


後で聞いた事によれば、昔は分校側と本校側の仲は良くなかったそうだ。
運悪く滝沢先生がこの学院で初めての講義を受け持つ日にいざこざが起きたらしい。
そこで先生は怒って、講義を微妙な空気にしたとか……。

その頃は、理事長も生徒として講義を受けていたらしい。
なので、滝沢先生はとてもやり難かっただろう。


「君はそう言う事も起こさず、生徒たちともちゃんと打ち解けてるじゃないか」

「そうですかね…。良くて友達程度の関係でしかないんでしょうか?」


教える者と教えられる者との立場が上手く出来上がってない節がある。
今は微妙なバランスを保っているが、簡単に崩れ去りそうな気がするのだ。


「――僕はチラッと君の授業を見たことがあるんだけど、君はお手本と言うか実技の例を見せないのか?」

「――っ」


痛いところを突かれた。


「緊張…してるのかもしれません。僕は皆より絵が下手で笑われてしまうとか…」


ここは御嬢様学校だ。
絵を昔から嗜んできた、と言う生徒は結構多いらしい。
技術としては、僕と同等程度の子もいるかもしれない。
だから怖いのだ。


「――僕は、絵を描いた事はあるけど…そこまで真剣に悩んだ事はない。君は美術の先生だから当たり前なのかもしれない。けれど、その想いは嘘じゃない筈だ」






僕が美術、と言うか絵と出会ったのは何の事でもない小学生の授業での事だ。
当時、僕の成績は良くも悪くもなく、所謂、記憶に残らない人間だった。
けれど、僕は絵を描くと言う事に出会って、少し変わったと思った――。


『おまえ、絵上手いじゃん』


クラスメートが僕の絵を見てそう言った。
とても嬉しかった。
それから、僕の趣味も将来も絵で生きていければ良いと思ったのだ。

だけど、それは叶わなかった――。
技術を学び、理屈を覚えていくうちに気持ちが篭らなくなってきた。
何枚、何十枚、何百枚と課題と言う名の作品を出していくうちに、想いを載せる事を忘れていった。

それは、結果にも現れてしまった。
無機質な建物の建築図のような、正確さだけが取り得の絵しか描けなくなった。

それを僕は勝手に自分の限界だ、と判断して――。
画家になる事をやめた。

想いを剥き出しだと、カッコ悪いし疲れるし――。
良い事があまりにも少ないと感じたから…。

けれど…出来る事なら、この想いを自分の作品に込めれれば…。












「せんせーい、お手本はありがたいのですけど、講義時間丸々を使っちゃ…」

「え?うゎ、ゴメン」

「いえ。ですが、良い物を見れた気がします」


黒板にチョークで描かれたものは、とても美麗で想いの篭った一枚の絵画が完成していた。
僕のこの学院での本当の生活はここから始まった――。


Fin.
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テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

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この記事のコメント

初投稿させて頂きます。
かにしのSS楽しませてもらいました♪
色々サイト巡りして探しているんですが
いや、なかなか無い(ノ-;)
という事で?望めるのならもっと沢山読ませていただきたいと思います♪
2007-03-14 Wed 23:59 | URL | 名無しの明日香 #-[ 編集]
遅レスすみません(汗
なかなか時間ができなかったので、返事が返せませんでした(汗
とにかく、喜んで頂けてうれしい限りです。
続編をよく妄想するのですが、これはこのまま終わった方が良いのかどうか悩んでる最中です。

私は全キャラ好きなのですが、やっぱり正ヒロイン(?)っぽいのでみやび重視で書いていきたいと思っています。

いつ次回作になるかわかりませんが、何時か掲載できれば・・・と思っていますので、気長にお待ちください。
2007-03-22 Thu 00:26 | URL | KaNi #NohCqvcE[ 編集]

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